こんにちは。北海道札幌市の行政書士、安藤です。

本日は、「【家族信託って何?】――『一般人の枠に収まらない姉』が、弟と母に家族信託を教授する物語(中編)」からの続きでございます。

※【家族信託って何?】――『一般人の枠に収まらない姉』が、弟と母に家族信託を教授する物語(中編)は、→こちらからどうぞ♪

※【家族信託って何?】――『一般人の枠に収まらない姉』が、弟と母に家族信託を教授する物語(前編)は、→こちらからどうぞ♪

簡単に前回(中編)を振り返ると...

母名義の不動産(=実家)を売る時には、母の『売りたい』という意思能力が必要。(つまり名義人が認知症だと、実家を売ることが難しい場合もある。)

かといって意思能力のある現時点で不動産(=実家)の名義を母から姉へ移せば、『贈与税』が発生してしまう。

そんなとき姉が、贈与税がかからずに名義を移すことができる『家族信託』という方法がある

...と言葉にしたところまでの内容となっておりました。

それでは続きをどうぞ!

 

 

 

「家族信託は2007年9月に信託法が改正されたことにより、私たちのような一般の家族でも活用できるようになったものなんだけど、これをイチから説明するとこんがらがると思うから、ウチの家族に当てはめて話していくわね。」

という姉の言葉に全くもって、異論はない。(その方が僕もありがたい。)

「ではウチの場合だと、まずお母さんと私(←あんたでもいいんだけど、とりあえず今回は私にしておくわね)で『信託契約』を締結するの。そして認知症になると出来なくなってしまうための『対策』を、その信託契約の中に入れておく。例えば、『お母さんが施設に入るようになったら、私(長女A)が実家を売却し、その売却代金を施設の入所費用にあてる』とかね。」

「へー、つまりあらかじめ信託契約を締結しておけば、お母さんが認知症になっても家を売ることが出来る、というわけだね。」

「エグザリー!」

...たぶん『その通り(Exactly)と言いたいのだろう。まぁ、ここはスルーだ。

「あと認知症になった場合の問題点としては、預金口座の凍結もあげることができるわね。」

「凍結? それって、預金口座からお金を引き出すことが出来なくなる場合があるってこと?」

「その通り。家を売るにしてもお金を口座から引き出すにしても、自分の財産に何かしら手を加えるには、その人の『意思能力』が必要なのよ。」

「なるほどね~。」

具体例をだして話してくれるため、姉の説明はとても理解しやすい。

ただ一つ疑問点が生じたため、ここでそのことを聞いてみる。

「お母さんが認知症になっても、姉ちゃんが実家を売ることができるのは分かったよ。ただ、なんか腑に落ちないところがあるというか...」

「どの辺りが?」

「だって 契約内容に『お母さん名義の家を姉ちゃんが売ることが出来る』と書くだけでその効力が生じるのなら、他人名義の不動産を誰もが勝手に売ることが出来ちゃうんじゃない? 誰かがウチのお母さんをだまして契約書を作成し、この家がいつの間にか他人名義になってしまっている、なんてことにもなってしまうんじゃないの?」

「おぉ、さすが『腐っても私の弟』。いい所に気が付いたわね。」

「...ありがと。」

「もちろん、『契約書に書くだけ』ではダメよ。実家の名義を『お母さんから私に移す』必要があるの。」

「え、それって生前贈与と同じに感じるけど、それでも贈与税はかからないの?」

「確かに形は生前贈与に似てるんだけどね。でも今回の場合、『信託契約を締結する』って話しをしたでしょ。そこで『委託者=お母さん』、『受託者=私(長女A)』、『受益者=お母さん』とする契約内容にしておくの。」

「?...なんか、お母さんが2回でてきたけど。」

「そう! 今回の信託契約は『委託者』と『受益者』が同一人(=お母さん)になっているところが重要なの。実家の名義は私に変更されるんだけど、これはあくまで形式的なもので、税務上は実質的に信託財産に関する経済的価値を持つ受益者(=お母さん)が所有者とみなされるの。委託者と受益者が同一人の信託を『自益信託』って言うんだけど、つまりウチのような自益信託の場合、信託契約の前後で経済的価値である受益権は移動しないから、信託の効力発生時に課税関係は発生しない、というわけなのよ。ドゥーユーアンダスタン?」

「...ちょっと何言ってるか分からない。」

「(サンドウィッチマン)富澤か!」

「いや、ボケたわけじゃないから! 言ってる内容が難しくて、本当に理解できてないの!」(サンドウィッチマンさん、すみません。)

「あ、そうなの。――まぁ、信託法っていうのは難しいからね。とりあえず、『ウチの場合は贈与税がかからない』って覚えておけば十分よ。」

「それもそっか。あとは家族信託に詳しい専門家に任せればいいってことかな。」

「そうそう。一般の人が信託法の仕組みをきっちり理解するのは、とても大変なことだから。まぁたまに、どんなことにも対応できる私のような『スーパー一般人』も存在しちゃうけどね!」

確かに姉は『一般人』の枠に収まらない人である。もちろん、いろんな意味でだが...

「まぁ、認知症になっても安心できる仕組みがあるってことが分かったし。姉ちゃんから話しが聞けてよかったね、お母さん。」

「あぁ、とてもよかったよ! そこでお姉ちゃん。最後に『これだけは大事だ!』っていう言葉は何かあるかい?」

「そうねぇ、家族信託を始めるのは『認知症になる前に!』ってことかしら。家族信託契約を締結するためには、『意思能力が必要』だからね。」

「なるほど。『家族信託の契約』や『遺言書の作成』とかで自分の想いを伝えようと思っても、実際に終活を行う人が認知症になっていたら難しいってことだね。」

「そうそ...って、ああっ! もっと大事なことがあったわ! 私としたことが...」

「え、もっと大事なこと?」

認知症になる前に家族信託契約を締結するというのも、とても大事なことだと思うんだけど。他にも、もっと大事なことがあるのか...

「お母さんは『私が子供でよかった』ということよ。」

...は?

『私が子供でよかった』?

こういう場合、一般的には『お母さんの子供でよかった』という言い方になると思うんだけど。

なぜ姉はいつも、『自分が主役』になってしまうんだろうか...

「そうだねぇ、本当にお姉ちゃんが私の娘でよかったよ。」

って、母も姉の言葉をそのまま受け入れてるし!

「あんたもよ。」

「えっ?」

今度は姉が僕に向かって言う。

「あんたも私が姉でよかったでしょ?」

--ま、いいか。それじゃ、僕も乗ってやることにしよう。

「そうだね、僕も姉ちゃんが姉でよかったよ。」

こんな家族がいてもいいよね、天国のお父さん!

(了)

 

※この物語はフィクションです。

 

 

 

――物語は以上で終了です。

(「家族信託」というものが、これまでより幾らかでもご理解頂ければ幸いです。)

 

 

最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

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